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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「ははは、言うねぇ、姐さんも。姐さんも好きだったんだろう?」
「過去系よ、過去系! 私は不憫な柚の応援側にいたいわ。あんたは?」
「俺は……まあ、結局のところ、あのひとを助けてやらなきゃ、柚は幸せにならないから、どっちの味方でもあるけどさ」
「いい度胸ね。天下の早瀬須王に見出された身の上なのに」
「大恩があるからこそ、さ。どうせあのひとに説教する奴なんていないだろうから」
「あの……いい?」
なにやら早口で盛り上がっていて、置いてきぼりを食らった感。
「ああ、いいのいいの柚は」
「そうそう、柚はいいから、深呼吸してろよ」
よくわからないけど、仲良くなっているふたりの前で深呼吸をしてみた。
「よーし、じゃあ俺達の感想兼アドバイス。まずは姐さんから」
「んー。早瀬さんにも事情があったんでしょうけれど、九年もあんたを苦しめたまま放置していることに、クズと言ってやりたい心境だし、だったらこのまま柚に嫌われてろと言いたいし」
さすがは元ヤン、辛辣だけれど……。
「でも柚が頑張ると心を決めたのなら、私は喜んで背中を押したいわね」
「奈緒さん……っ」
「泣かないの! 本当にあんた、会社でなにを言われてもつらりとしていたくせに、そんなに涙もろかったなんて反則でしょう!」
あたしは目を擦りながら笑った。