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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
 


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 朝、五時に目覚めたあたしが、男性陣が寝ている居住部にあるキッチンでお米を研いで炊飯器のセットをしていると、ドスドスと音がして、出かけていたらしい小林さんが帰ってきた。

 手にはたくさんの新聞。

「おはよう、嬢ちゃん。今日は休みなのに、働き者だな」

「おはようございます。厄介者になっている身だから、せめてあたしが出来ることをしたいなと……」

「がははは、気を遣わなくていいんだぞ。ここは須王の家だから、好き勝手にやっても大丈夫だ」

 ……いつも好き勝手にやっているんだな、小林さん。

「しかし朝一番に、エプロンつけた嬢ちゃんがあいつのために食事を作っているのを見たら、感激で泣き出すんじゃないかな。そのうちあいつの家に行って作ってやってくれや」

「え、そんなに自炊してないんですか、あのひと」

 驚きのあまりに唖然としていると、小林さんが愉快そうに笑った。

「そうくるか。がはははは」

 対面キッチンカウンターに座った小林さんは、新聞を広げて見ている。

「どうですか? 載っているようですか?」

「ん……ねぇな。コンビニだけじゃなく、新聞の販売所に行っていろんな新聞取り寄せてみたが、今のところ東京は平和すぎるようだ」

「そうですか……」

 あたしはおたまで味噌汁をかき混ぜながら、嘆く。

「うわーいい匂い。おはよう、柚。あ、くまのおっさんも」

 裕貴くんが欠伸をしながら起きてきたようだ。

 冬に近い季節でも、裕貴くんは半袖Tシャツにハーフパンツに裸足。

 さすが現役高校生、若い!
 
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