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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「早いね、裕貴くん。もうちょっと寝ててもよかったのに」
「いや、元々俺、朝の五時前から持参タブレットでSNS駆け回って、仲間と連絡取ってたんだ」
「どうだったんだ?」
「収穫なし。いやあったというのかな?」
「どういう意味?」
「情報を求める旨の書き込みすら、瞬く間に消えてしまうんだって。報道規制というより、その対処が早すぎるから、なにかネットを巡回しているプログラムみたいなものが、指定した禁忌ワードみたいのにひっかかる記事を、自動的に消すようにしているんじゃないかって」
「そんなこと出来るものなの? ネットって広いじゃない? 世界まで広がっているのに、そこから、書き込みしたひとのパソコンを使ってもいない第三者が、勝手に改竄のようなものをしているってことでしょう?」
「そりゃあ素人は無理さ。仮にプログラムみたいのを作れたとして、洪水のように流れてくる、ネットの全世界の情報を監視して措置をとれるのは、動かす機械も超優秀じゃないといけないだろうし、それぞれのサイトにも対外的な攻撃に対してブロックするような対処もなされているだろうし、それをいちいちクリアしていくプログラムを組まないといけないし」
「……裕貴。お前やけに詳しいじゃないか。機械オタクだったのか?」
「オタクじゃないけど、俺の専攻学科は情報メディア学科で、SNSの構築とかを始めとして、サイバーテロとかを勉強している最中なわけよ」
「へーすごーい」
「柚、棒読み! まあ、普通のひとは、柚みたいにパソコンではネットみたりメールしたり。書類作成で、ワープロとか表計算ぐらいしか使わないよね」
「あ、表計算はしないよ。書類で表を作らないといけない時は、電卓叩いて出てきた数字を入れてるし」
「柚……。今度教えてやるから。それ、手間かかるだけだって。マイクロソ○トだろ、入ってるの」
「うん、そうそう。教えてくれるの、本当!? 実は面倒だったのよね、大きい表になると、後で訂正があったら、すべてのマスにまた電卓たたき直した数字を入れないといけないから。間違いやすいから、それから何度も確認でまた電卓叩かないといけないし」
「うんうん、ひとつ訂正するだけですべて数字は、自動的に変わってくれるから」
「凄いね、裕貴くんのパソコン!」
「いやいや、柚のパソコンでも同じこと出来るから!」