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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
 

 喜んでいる最中に、女帝が起きてきた。

 眠そうなのに、化粧バッチリおめめぱっちり。
 
「おはよ。早いわね。……なに盛り上がってるの?」

「え、裕貴くんがパソコン詳しいみたいだから、表計算ソフトの使い方を教えて貰うことにして」

「え、裕貴、使い方わかるの!? 私も、私も!!」

「……社会人になって、会社勤めをしていて、いるんだ……表計算も出来ないの」

「あたし、参考書は買ったのよ。こんな分厚いの。だけど、あたしがしたいのが何頁にあるのか、それを探すだけで疲れるというか。だったら、電卓叩いた方が早かったの」

「それ、言える。私は専ら、色を着けるだけね」

「あ、綺麗だものね、奈緒さんの選ぶ色。自分で作っているんでしょう? テンプレートにないものね」

「そうそう! 結構気を遣っててね、目がチカチカしないようにちょっと灰色を……」

「……色より、計算しようよ……」

「ぶははははは」

 小林さんが大笑いしたら、皆で顔を見合わせて笑ってしまい、そこに御殿の主がやってきた。

「朝っぱらからなんだ、大声で……」

 王様はふらふらしてて、今にもばったり倒れそうだ。

「え、どこか具合悪いんですか?」

「がはははは、須王は低血圧なんだ。だからそこのソファで転がしておけば適当に復活するから」

 そう言いながら、小林さんが早瀬の背を押すようにして、白い革張りのソファに倒すと、早瀬は動かない。

「須王さんの弱点は、朝!!」

「裕貴、写真撮っちゃえ!」

「ラジャ、姐さん!! やべ、なにこの無防備な可愛い生き物!」

「どれどれ……うわ、私の胸にずっきゅーんって」

「姐さん、傷が開くからあっちに行ってて!」

 パシャパシャと写真をとる裕貴くんを見ながら、あたしは昨日の朝のことを思い出していた。

 ……低血圧、か。

 早瀬と泊まった朝は、いつもあたしがすぐ帰ってしまうことが多いからわからなかった。

 朝、弱いのに朝三時から起きてあたしの家の前で張っていてくれたんだ。

 そう思うと、じーんと感動してしまった。
 
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