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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
 

 こんな貢物を貰っていても、王様の顔の表情は変わらない。
 優雅にお箸を使って食べている。

 お箸の使い方で、そのひとの人となりがわかるというが、実はあたしのお箸の使い方は意識しなくともばってんになり、亜貴に徹底的に直された。

 亜貴とは年に数回会っていたけれど、亜貴もおばさんもそこまで優雅さを見せてはいなかったと思うが、亜貴が一人暮らしをした時には既に、料理も礼儀作法もきちんとしていたという不思議。

 まあそんなで、亜貴を師匠にして育ったあたしとしては、ひとのお箸の使い方を見てしまう癖がついてしまっているけれど、早瀬の箸の持ち方は本当に素晴らしいと思う。

 育ちが特別にいいというわけでもないのだろうけれど。

 ひたすら黙々と食べ続ける早瀬は、美味しいとも不味いともなにひとつ感想を言わず、ただご飯粒ひとつ残さずに綺麗に食べた。

 煮麺程度で喜んでくれた早瀬を思い出せば、とても寂しい気分ではあったけれど、その代わりに、小林さんと裕貴くんが美味しいと喜んでくれたから、いいことにしようか。

「裕貴、もう一度」

 洗い物もすべて終わった時、リビングルームで打ち合わせ。

 脱線して中途半端になってしまった裕貴くんの話を聞いていたら、ひとり用のソファにどかりと腰掛け、長い足を組んでいた早瀬がストップをかけた。

「SNS仲間の見解はなんだって?」

「え、あ、うん。上から情報規制が敷かれているにしては、記事を消すのが早いし、サイトのブロック関係なく簡単に記事が消えるから、パソコンをよくわかっている誰か……ハッカーとかが、サイトの防衛くぐり抜けて自動削除するプログラムでも置き土産をしているんじゃないかって」

 ハッカー!!

 パソコン音痴のあたしでも、洋画によく出てくる……パソコンをカタカタして、アメリカ政府とか巨大組織とかのコンピューター内に入り込み、機密情報を参照したり、書き換えたりするひとのことを、ハッカーというくらいは知っている。
 
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