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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
 

「……出来ます」

「強がるんじゃねぇよ」

「強がりじゃなくて、本心です」

「……ふぅん? そんなに手、震えてて?」

 ……あたしの手が震えていた。

「これは……っ」

「俺は、もっと最悪な事態を想定してる。情報操作ぐらいでこうなら、この先生きてられねぇぞ?」

「……っ、亜貴のところに……」

「病人にお前が守れるか!」

 早瀬が語気を荒げた。

「もっと現実を見ろ!」

「そ、そんなこと言ったって……。非日常的な銃を突きつけられて、ただの音楽家のあなたがそれに対処出来ると言うんですか?」

「……出来る」

「嘘」

「出来るんだから、俺を頼れよ。誰が銃如きに怖じ気づいて、お前から離れたいと言ったよ!? 俺が傍にいるのは基本だろう!? 俺、嫌な顔をしてたか!?」

「し、してないけど……あなたの顔は元々そういう……」

「あ゛!?」

「ひぃぃぃぃっ!!」
 


「……俺、もっと言い方があると思うんだけどな」

「ぶははははは」




「あたしはあなたを、あたしのためにおかしな危険に巻き込みたくないんです! あなたにはあなたの人生があるでしょう!? あなたは皆のために、素晴らしい音楽を作り続けて下さい!!」

「誰が平和に生きてぇって言ったよ! そこで音楽持ち出すなよ!」

「だってあなたは音楽家でしょう!?」

「お前、音楽とお前を天秤にかける気か!?」

「はああああ!?」

 なぜだ。
 なぜあたしの意向が、まるでこの男に通じない。

 なんでこんなに怒らないといけないんだ、あたし!!



「……本当に、世話が焼けるわね。もうそろそろ出番かしら。さあ、出動よ」

「がはははは!」

 
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