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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
奈緒さんがあたしに抱きついて言った。
「柚。私は、柚を守りたいの。私、柚の友達でしょう!? 私の意志で柚のそばにいたいから、拒まないで! 一緒に頑張ろうよ!」
「奈緒さん、でも……」
裕貴くんが、あたしの腕を掴んで言った。
「水くさいよ、柚! 俺、柚の友達だろう!? 俺も姐さんも柚の力になりたいんだよ。善意じゃなくて、俺達の意志! ひとりで出来ないことも、皆で考えれば、乗り切れると思うんだ!」
「裕貴、くん……」
小林さんが豪快に笑いながら言う。
「嬢ちゃん。もう俺も友達でいいんだよな? 俺は年食ってる分、役に立てると思うぞ? 家に戻っても、嫁に閉め出されるわ。どうして、逃げ帰ってきたのかってさ」
「小林さん……」
皆が早瀬を見た。
ドヤ顔をしている気がするけれど、なぜ?
早瀬は皆を睨み付けるようにした後、俯き加減で頭をガシガシ掻いた。
苛立っているように、思いきり掻いている。
そして――。
「俺が守りたい」
上げられたその顔の、強い意志が宿るその目にぞくっとした。
「どんな事態になってもお前を守りたいから、ここに呼んだ。俺は、相手がなんだろうと、逃げる気は元からねぇから。だから……どんなことがあろうと、このまま守らせてくれ。……これは俺の意志だ」
胸の奥がきゅっと絞られる。
「姐さん、合格?」
「いやいや、まだでしょ。〝友達〟のところがないもの」
「ぶははははは。須王、〝友達〟じゃねぇのか? 根拠を言わねぇとわからねぇぞ、嬢ちゃんは!」
「……っ、俺はお前の――」
そして早瀬は、渋い顔をして言った。
「上司だろう!? 上司命令だ!!」
三人がよろけて倒れた。
……なんだかね、早瀬に対して素直になろうとしているからなのかな。
早瀬が少しわかってきたような気もするんだ。
そんなにお口を尖らせて、明らかに〝上司〟は言い訳だといわんばかりの顔で、それでも〝友達〟の言葉を避けたのは、性処理という意味ではなく、少しは特別性があるからだと、いいように思わせて欲しい。
あなた言葉より、あなたの……守りたいと言ったその目が、その声が、あたしは嬉しかったの。
とてもとても、嬉しかったの。