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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
 


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 前日早瀬が宣言していた通り、班行動はふたつに別れた。

 裕貴くんはタブレットとスマホに、ネット仲間からの情報が入るようになっているらしく、それら文明の利器を持参して、女帝と共に小林さんの運転する車に乗り込んだ。

――素知らぬふりをしながら、付近の店とかからも事情聴取してくるわ。物事をずばっと見抜ける裕貴と、私の営業モードの顔をみせれば、楽勝よ。なにかあれば、ガーディアンがいるしね。

 ガーディアン……小林さんは、空手・柔道・レスリング・ムエタイ……などなどかなりの種類の格闘技の黒帯も黒帯、もう少しで師範代になるくらいの実力の持ち主だったことが判明。

――だけど俺、早瀬には勝てなかったんだわ。まあ姉ちゃんのような、瞬殺ではなかったけどな。

 豪快に笑う小林さんは、体格を比べる限りにおいても、あまりに信じられないことを豪快に笑って言った。

 ただの音楽家だよね?

 どう見ても、格闘技と無縁な涼しい顔をしているし、楽器を弄る手は、小林さんのようにごつごつしていないで、綺麗なものだ。

 謎めく早瀬が運転する車は、あたしを乗せて、青山から木場方向に消える小林さんのランクルとは別れて走って行く。

 振動の少ない高級外車の上に、早瀬のブレーキの踏み方がゆっくりなのか丁寧で上手いせいなのか、信号などで停まる時は、あたしが運転した時のようにガックンという衝撃がない。

「………」

「………」

 心地よい運転。座り心地のいい高級車。
 流れる景色と狭い空間。

 隣には眼鏡をかけた、クールな早瀬の横顔。
 
 いつも背広姿しか見ていなかったけれど、今は初めて見るカジュアルファッション。

 ネイビーともっと濃い青色が模様のように混ざったロング丈のニットカーディガンから、僅かにドレープ状になって大きい襟ぐりとなった白いカットソーを覗かせ、首にある黒革のチョーカーから、シルバーの模様が彫り込まれた長方形のペンダントヘッドがぶら下がっている。
 
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