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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
あの首元を見せるカットソーでセクシーさと、あのアクセサリーで男らしさを演出?
さすが、敏腕プロデューサーは違うね。
別に緑ジャージでもいいのにさ、あれを自分に似合うと思って買っちゃうわけ?
それを作ったひとが期待した以上に、美しく着こなしてしまうのが憎いね。
どうせどれもお高いんだろうね、王様の選ぶお洋服だものね。
今度王様ブランド立ち上げればいいのに。
などと、横目でちらちらと称賛よりも悪態をついているのは、これ以上早瀬の魅力を狭い空間で受け取りたくなかったから。
そしてあたしは、早瀬とふたりきりになったのは、昨日のあの中庭以来だということに気づいた。今さらながら。
「………」
「………」
本当に今さらなんだけれど、昨日は女帝と裕貴くんと話してすぐ寝てしまい、今日は朝から皆で賑やかに過ごしていて、忘れてしまっていたけれど。
……あたし昨夜、早瀬に胸触られ、舐められた。
「……っ」
お外でなんたること!!
お酒って怖い。
その上で、あたし……早瀬に告る決意をして、当たってぶつかって砕ける決意をしたんだ。
……だとしたら、金曜日早瀬に当たって砕けたら、もしかして興ざめした早瀬に、永遠に背を向けられる可能性だってあるわけで。
もしかすると、セックスまがいなことは、昨日の胸への戯れが最後になってしまうかもしれない――そう思ったら、実に複雑で。
早瀬に抱かれたいというよりは、あたしを愛してくれる早瀬に抱かれたいというのが正解で、今までのように愛のないセックスはもうしたくないのだけれど、だけど好きなひとに抱かれるだけいいのかもしれないとか思ってしまうと、今までをなにひとつ変えられないじゃないか、と、出口なき迷路に迷い込んだかのように途方に暮れてしまう。
ああ、くそっ。
身体の関係が先の愛情の自覚というのは本当に厄介で、早瀬のように気持ちがなくてもセックスしてすっきり……としないところが、やけに恨めしい。
「……どうした?」
無言のままで色々と考え込んでいたら、早瀬が不意に訊いてくる。
「いいえ」
……それに、守りたいと言われたのは純粋に嬉しかったけれど、そういえば今日はキスがないよな……なんて、一瞬でも思ってしまった自分を殴りたくなる。