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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「は? なに言ってるのお前。あんなにモテてたくせに」
「いや、あなたこそなにを言い出すんですか? へんな夢か幻覚でも見てません? それとも、そういういじめですか?」
鼻でせせら笑うと、早瀬は眉間にくっきりと皺を刻んだようだ。
「お前、高校で色々な男に告られてただろう?」
「ないですよ、そんなの。それならあなたでしょう?」
「俺はいいんだよ、お前の話だ」
……そこは否定しないわけね。
「お前、難攻不落の高嶺の花だったんだぞ」
ナンコウフラクノタカネノハナ。
なんの呪文かしら。
「誰かと間違ってません? あたしがそんなわけないでしょうが」
言っていて、虚しくなってくる。
「なんでお前、自覚ねぇの? 呼び出されてただろう、いつも」
「あ、家族のサインを求められはしましたよ? 何人かから」
「そんなの口実じゃねぇかよ!」
「なんの?」
「お前を落とすための。だから俺、必死に……」
「必死に?」
するとはっとしたようにして、早瀬は言う。
「いいんだよ、俺の話は!! 今はお前の話だろ!?」
言ったの自分じゃないか。