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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
「あのですね……」
「言葉遣い!」
「あたしの家族を知っているのならわかっていると思うけど、あたしは醜いアヒルの子なの。あたし以外は綺麗な白鳥なのよ。碧姉と比べたら、あたしの顔不細工すぎて……言ってて哀しくなってくる」
「それは上原碧と比べてだろう? あんなのと一緒にするな」
「あんなのって……」
「あんなのだよ、男に狙いを定めている肉食だろう。あれに比べれば、三芳はまだ可愛いものだ」
「そうは感じたことはないけど。美人だから、恋の遍歴は多いだろうけど」
「あんなのが美女の代表格じゃねぇから! 誰も喜んで生餌になる男はいねぇから!」
「そ、そう?」
……で、あたしはなんで怒られているの?
「お前は不落な高嶺の花だったんだ。上原ファミリーの娘ということ以外にも」
「あたし、そこら辺に咲いている雑草よ? アスファルトの間にぼそぼそと生えているような「高嶺の花なんだ!」」
早瀬はどうしても高尚なものに格上げしたいらしい。
ちょっとそれは、本当の高嶺の花さんに悪いよ。
こんなのが高嶺の花さんだったら、本当の高嶺の花さんはなんと言えばいいのよ。
「買いかぶりすぎ」
「違う……けど自覚ねぇならそれでいい。うん。お前の環境はよかったのかも知れねぇな、俺にとっては。アキや朝霞が邪魔だけど」
……なに突然早口で、ぶつぶつと。
「そういや朝霞から、LINE返ってきたか?」
「いいえ。……うん、今でも既読になってないわ」
「……そうか」
早瀬は厳しい表情の横顔を見せた。
「朝霞さん、あの銃のひと達に拉致されているとかは……」
「ねぇだろうな、まず。拉致されるようなアホではねぇだろ」
「あたしより朝霞さん知ってるね」
「……匂うんだよ、あいつから俺と似た匂いが。……地下の匂いが」
「地下?」
早瀬は答えなかった。