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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
東京都目黒区自由が丘――。
江戸城の城下町の南側……いわゆる城南地区とされる地域にあり、西洋風の家並みが続き、お洒落な雑貨や洋菓子店が並ぶことで有名な場所である。
車は自由が丘につき、高級外車でも難なく受け入れてくれそうな、駅からほど近い大きな駐車場に停められた。
ファン避けにまた眼鏡をして降り立ったが、やはりどう見ても顔隠しにはならないと思う。
女の子が多い地域だろうし、なによりモデル真っ青の姿態。どこからでも見つかるように思うけれど、本人はまるでその危惧はないらしい。
「お前、自由が丘に来たことあるのか?」
「初めて」
「そうか。……ところでお前、ケーキとか洋菓子好き?」
「うん、大好き」
「……ふっ、女だな」
早瀬は口元を綻ばせて笑う。
「女だもの!」
そうムキになって言ったけれど、早瀬の目が優しくて。甘く思えて……吸い込まれてしまいそうに惹き込まれて。
「時間があるから、食べて行くか」
「へ?」
早瀬に見惚れていたあたしは、裏返ったような声を出してしまった。
「スイーツ。好きなんだろう? 俺のも選べよ」
「え、あなたも食べるの?」
「ああ」
あの早瀬須王が、スイーツ!?
自由が丘のお洒落な喫茶店で、優雅にケーキとか食べちゃうわけ?