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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
 
 
 急かされるままメニューからお好きなものひとつ。複数勧められたけれど、せめておひとつだけ。誘惑に負けて、いらないとは言い切れなかった。

 だが、あまりに商品が素晴らしすぎて選びきれない。

 ラズベリーモンブランってなに?
 
 ベリー入り抹茶のオムレットってなに?
 
 上にたんまりと様々なベリーとバニラアイスが乗せられている、濃厚チョコとベリーのパフェってなに?

 とにかく品数が豊富で、決められない。
 あたし、そこまで優柔不断ではないのに、まるで決められない。

 そう訴えると、面白そうにあたしを見ていた早瀬は、笑いながら言う。

「お前昨日ケーキ食ったなら、今はパフェにしろよ。俺ケーキにするから、ちょっとやる。お前のパフェもちょっと寄越せよ?」

 二種類味見できるなんて最高。

 そしてふたつになってもやはり決められないあたしを笑って、店員を呼んだ早瀬が選んだのは、あたしが特にじぃぃぃっと見ていた二種類……ラズベリーモンブランと、濃厚チョコアイスとベリーのパフェだった。

 茶色いデザイン性がある椅子に座り、テーブルはワイン色。
 広い店内装飾も、そのふた色で統一されている。

 窓からは、車が行き交うちょっとした大通り。
 休みのせいか、カップルばかりが歩いているように思える。

 あの早瀬と、こんなところで横に並んでスイーツ。
 ちょっと前には考えられなかった状況だ。

 長い足を組んだだけでもう別世界の王子様になれる早瀬に、ちらちらと周囲から熱視線が向いてきたようだが、あたしに向けられるのは氷より凍てついた冷視線のように思える。

 あたしのことは、オブジェとも思って下さい。

 はい、身の程知らずにも来週告白しようとしているただの馬鹿者ですので。
 笑いたければ笑って下さい。
 
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