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エリュシオンでささやいて
第6章 Invisible Voice
 

 よかった。

 せっかくだったけれど、ラズベリーモンブラン、味なんかわからないから、自分のを堪能しよう。

 あたしのパフェは、広口のガラスカップの中に、これでもかと、幸せが詰め込まれている。
 
 嬉しくてほくほくして食べる。
 一口食べたら、ほっぺたが落っこちそうなほどおいしくて、次々と食べる。

 チョコとベリーの組み合わせもいい!!

 ……気づくと、テーブルの上に片肘をついたまま、詰るような目で早瀬があたしを見ている。

「な、なに? 欲しいなら、あげるよ。はい」

 あーんは却下して、器ごと早瀬に押しつけるが、早瀬はさらにじとっとした目であたしを見た。

「いらないなら、それ返して……」

 パフェを取り戻そうとするが、早瀬の手がそれを遠ざけた。

「……返してってば」

「むかつく」

「へ?」

「なんで、俺よりこっちの方が嬉しそうなわけ?」

「え、美味しいから……」

 すると早瀬はスプーンを持つあたしの手を掴んで、パフェの中にスプーンを入れて山盛りにすると、あたしの手ごと口に運んで男らしい首筋を見せつけるようにして、食べる。

 あ……間接キスだ。

 なんて思ったら、もう手が離れないこの状況をどうにかして欲しいと、あたしも赤い顔を早瀬から背けると、急に艶めかしいなにかで指を舐められて、飛び上がる。

「それ、手! あたしの指!」
 
「わかってるよ」

 わかっているのなら、そんなに美味しそうにぺろぺろしないでよ。

「ずっげー、顔真っ赤。こんな程度で赤くなるのなら、お前金曜日どうするんだよ」

 意味ありげな、それでいて挑発的な眼差し。

「……っ、な、なななな!!」

 あたしは全力で手を早瀬の元から奪い取った。

「……身体の隅から隅まで、舐めるぞ?」

「ひぃぃぃぃぃぃっ」

「あはははははは」

 全身総毛立ったあたしに、早瀬は愉快そうに笑った。
 
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