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エリュシオンでささやいて
第2章 Lost Voice
「ホント身体は、素直だな。すげぇ、とろとろ……」
屈辱で泣きたくなってくるのに、口から出るのは喘ぎだけ。
こうして後ろから蜜壷に指を何本も入れて抜き差しされながら、ただこの拷問のような時間が早く過ぎ去って欲しいと願う。
彼の熱を匂いを声を、なにもあたしは感じたくないのに――カチャカチャ鳴るベルトの音と、なにかがピリと破られる音に、浅ましくもあたしの身体はきゅんと疼いて、直の早瀬を感じたいと恋い焦がれてしまうんだ。
「ゆ……ずっ、もう限界。なあ……入っていい?」
上擦ったような熱い声に、あたしは首を横に振る。
――柚――、もう俺、限界。痛かったら、俺の肩を噛んでいいから。優しく出来なかったら、ごめんな……。
過去が押し寄せ、嫌だと、繋がりたくないとそう頭を横に振っても、それでも彼は、いつものようにあたしの意見など無視して、猛る熱いものを蜜にまぶすように花園を往復すると――。
「挿れる、ぞ……っ」
膨張しきった質量ある異物を、潤った蜜壷の奥に向け、狭道をぎちぎちと押し開いて、挿れてくるんだ。
存在を主張して、容赦なくあたしを蹂躙してくる。
息が、詰まる――。
「あ……っ、キツ……」
早瀬の髪があたしの背中を掠った。
不安定な浅い呼吸が背中にかかり、彼はあたしを後ろからぎゅっと強くだきしめながら、腰の律動を大きくさせる。
シャワーで幾分かは薄まったものの、それでも漂う、甘酸っぱいベリーからムスクへの余韻を残す彼の匂いが、欲情したオスの匂いと混ざって、あたしの細胞を奮わせる。
欲だけで繋がる動物じみた音は、なんていやらしいのか。
性処理なら性処理らしく、なにも音をたてずにいたいのに。
……胸の痛みなど感じずにいられるのに。
「柚……」
ああ、その愛おしいというような、切ない声はやめて。
勘違いしそうになるから。
九年前、初めて結ばれたあの時のように、あたしはひとりの女として愛されているのだと、そう……錯覚してしまうから。
「柚、声出せ……っ」
絞り出されるような掠れた声。蜜壷をその質量ある固いもので大きく擦り上げられる抽送に、あたしは手の甲を噛んで声を押し殺しながら、嫌だと横に振り続ける。