この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
「なぁ、棗。M84ではなくM85だとしたら、お前の〝前職〟からじゃねぇか」
棗くんの笑い声がぴたりと止まる。
「でも、改造してるんでしょう?」
「ああ。だけど元が、そっちから流れてきたものならば」
「薬物が関係あると……?」
「待ってぇぇぇ、なにその話!!」
まるで意味が不明なのに、突き進むふたりの会話。ストップをかけないと、恐怖心だけが煽られていくようで。
「まず、棗くんの前職ってなに?」
「え、あ……マトリよ」
「マトリ?」
「麻薬取締官のことよ」
さらりと、棗くんは言う。
「ええええ、警察にいたの、棗くん!」
そんな格好で、というのは呑み込んだ。
「ちがうわよ、マトリは厚生労働省所属であんな融通の利かない奴らではないわ。この格好を認めないんだから。いいじゃないのよね、ひとには趣味があるんだし」
棗くんはぷりぷりしているが、あたしにとってみれば大した違いはない。
……女装、趣味だったんだ。
「待って。前職から銃が流れてきたって、そのマトリさんでは銃を使うの?」
「マトリは名前じゃないんだけれどね。……そう。ベレッタM85、さっきの黒服が持っていた銃のシリーズを使うわ。時に海外のマフィアも絡む、やばい仕事も多いからね」