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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
 

「ひっ!!」

「なんで俺を見て逃げる」

「棗くんはマトリさんだから銃に詳しいとして、そういう銃をそうだと言い切れるあなたは、どちら様なんですか?」

「俺? ただの音楽家だ」

 ドドーンという音が頭の中で響く。

「いやいやいや。さらりと車の上で戦って、隣の車で敵をやっつけてくるあたり、ただの音楽家ではないでしょう!」

「……ふぅん? じゃあお前の目には、俺はなんだと思うわけ?」

「え?」

「クイズしてやろう。俺の正体あてクイズだ。外れたら怖い怖いお仕置きつき」

「へ?」

「A.ヤクザ B.武器商人 C.ヤクの売人 D.臓器販売者 E.暗殺者 F……」

「ストップストップ! あてる自信もなければお仕置き勘弁! なんでそんなのばっかりなの!? あなたはただの音楽家でしょう?」

「そう言ってるだろうが」

 なにか恐ろしくて、ぐすぐす泣くあたしの頭を撫でて早瀬は笑う。

「俺はただ音楽家だ。な、棗?」

「そうそう。須王はただの音楽家……ぶぶぶっ」

「なんでそこで吹き出すの、棗くん!!!」

「いえいえ、こっちの……ぶぶぶっ」

「棗くん!!」

 いまだ顔を思い出せない棗くんだけれど、戸惑いもすべてないまま、いつの間にか昔ながらの友達のように話していた。

 それが棗くんの話術なのか、早瀬が仲いいというだけのものなのかわからなかったけれど。
 
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