この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
棗くんは男の声で言った。
「……復活だ」
「は……?」
「〝我らは永久の闇より汝を求めん〟」
あたしにはわからない呪文で、早瀬の表情が凍り付いた。
「お前もその可能性を疑ったから、俺に連絡したんだろう?」
早瀬の声より低い、男の声の棗くんの声音が、とてもおどろおどろしくて怖くて、ざわっと悪寒を感じた。
「それは間違いないのか?」
「ああ。彼女が狙われているとなれば、〝ザクロ〟なんだろう。AOPと関係なくとも」
その時の早瀬の眼差しをなんと表現すればいいだろう。
悲哀であり憤怒であり悲嘆であり。
「あの……?」
早瀬は苦しそうに唇を噛みしめると、眉間に皺を寄せて目を瞑り、そのままシートに背を凭れさせて、喉元をさらすようにしてなにか考え込んでいる。
「それだけじゃない。お前、〝天の奏音〟って知っているか?」
「ああ。宗教だろう、胡散臭い」
「あの教祖に見覚えないか?」
「よく見てねぇな、デブハゲだったろう」
「あれ、大河原だぞ」
「あ?」
「幼女趣味に屍姦趣味で、無期懲役の判決食らった」
あたしは飛び上がった。
「大河原って、まさかあの大河原ですか!? 連続幼女誘拐と強姦と殺人を引き起こして、一時有名になった。確かあれ、あたしが大学行ってた時だから……」
亜貴がテレビを睨み付けるようにして見ていたのを覚えている。
いつも温和なのに、もの凄く怖い顔をしていたから。
「そうそう、それよ上原サン。よく覚えてるねぇ」
棗くんの口調はまた元に戻った。
否、素を隠した……とでも言えるか。