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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
「あ~、本当に、あんたは昔から彼女一筋ね。高校の時も、私ダシにしてよく会いに来てたものねぇ。知らないのは彼女だけ。……あんた今の顔、鏡で見てみる?」
「……いらねぇよ」
「自覚ある? 緩みまくって好き好きオーラを出しまくってる、王子様の顔」
「……でもこいつには通じねぇから、もっと強くしねぇと」
「あはははは。須王相手に、これは強敵ね。手強いわね~」
「……ゴホン。それより棗。〝エリュシオン〟と協会のメンバーを照合してみてくれ」
「あらん、簡単にいうこと」
「ふん、マトリから内調に引き抜かれたんだろ、引き抜き料を上乗せして、せいぜいあいつらを活用してやれ」
「あははは。須王も来ればいいでしょう。功績も残していて声かけられているんだし、あんたなら大歓迎されると思うけど」
「別に功績じゃねぇよ。……俺はただの音楽家でいい」
「ふふふ、彼女のためか。きっと彼女、あんたが必死になって音楽やって大成している意味を知ったら、あんたに頭上がらなくなるわね」
「……言うなよ。そんなことで縛りたくはねぇから」
「はいはい。ところで忍月財閥情報いる?」
「いらん!」
「あはははは」
「笑うな! 柚が起きる」
「ねぇ、私も柚チャンと言ってもいい?」
「駄目だ! 柚は俺のもんだ!」
「本人には言ったの?」
「……っ」
「おーい」
「……だよ」
「聞こえないよー」
「金曜日に言うんだよ!」
「あーら、そうだったの。フラれたら慰めてあげるからね。こっぴどく嫌われておいで、長く拗らせてる初恋よ、サヨウナラ~! 須王の新しい恋、カモーン!」
「な・つ・め――っ!!」
……などと、盛り上がっていることにも気づかずに、あたしはひたすら寝ていた。