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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
 

「もう、話が脱線しすぎよ。ええとなんの話……あ、元を正せば、この車は棗くんの車じゃないよね、という話で」

「違う。俺のことを呼び捨てにしろという話」

「それは違う!」

 外でわあわあとやっていたら、ランクルが現われた。

 窓から裕貴くんと女帝が顔を出して手を振るから、あたしも大きく手を振った。

 ……彼らと過ごした期間はまだ短いのに、彼らの顔を見るとほっとして笑顔になるのは、きっとあたしが皆に心を許しているからだろう。

「奈緒さーん、裕貴くーん」

 早瀬の手を撥ね除けて走る。

 女帝が笑顔で後部座席から下りてきて、そして初顔合わせになる棗くんを見た。

 ……こうして見てみると、女帝(天然の女)と棗くん(人工の女)は系統が似ているかもしれない。

 どちらも目鼻立ちが大きい美人で、ボンキュッボン。
 
 ふたりは睨み合うようにして、一定距離を開けたままぐるぐると回り始めた。

「あんた誰よ、そんな格好して私達を騙すつもり?」

 女帝が猫を被らないほど警戒しているらしい。

「あんた男でしょう!」

 あたしは思わずパチパチと拍手をしてしまった。

「え、男……」

 裕貴くんが口を開けたまま固まって、小林さんも驚いた顔をして棗くんを見ている。

「そうよ、男で悪い? ちょっと初対面で態度が悪いんじゃなくて、小娘が。須王、なんなのこの子!」

 棗くんが逆ギレだ。

「須王!? あんた早瀬さんのなんなのよ。早瀬さんには柚という……」

「上原サンより私の方が、須王との付き合いは長いの!!」

 ……そうなんだ。
 
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