この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
 

「動けるようになったら、点滴外して須王、病院を飛び出してね。あいつの親、家にいないから、いつもいつも病院から私に連絡が来て怒られて、探しにいっては連れ帰ってたの。わかる? 上原サンの家の前まで行ってたの。あなたの家は高校でも有名で、よく野次馬も行ってたでしょう」

「なんで……っ」

 あたしの目から涙が零れた。

「須王がなにを考えていたのかは、直接須王に聞きなさい。まあ、金曜に話すつもりなのかもしれないけれど。出来れば、須王の言葉が自発的に出るのを待っていて欲しいな、という気持ちはあるけれど」

「………」

「やっと退院できたのは冬でね、須王は補講をしてようやくぎりぎり卒業出来た。入院中に勉強頑張って、現役で大学には行ったけれど。普通の一般大学から、帝音大に編入して海外にも留学したの」

 一般から帝音大に編入するのは、トップレベルの音楽の技術と知識がなければいけないと聞く。宝塚の入学試験以上に狭き門なのだ。

 しかも海外なんてエリートコースじゃないか。

「どうして行けたの? 音楽やっていなかったのに」

「頑張ったの、須王。凄く頑張ったの。元々は趣味でアコギ(=アコースティックギター)を弾いて、私はベースを弾いて遊んではいたんだけれど。それ以外の、ピアノを始めとしてあらゆる音楽をマスターしたの。寝る間も惜しんで。ひとは彼を天才音楽家と言うけれど、私から見れば、努力の賜よ。あれだけ頑張ったのだから、どんなに若かろうと今の地位があるのは頷ける。当然よ」

 あたしはその場でへたりと座り込んでしまった。

「友達として、須王の名誉のために言っておく。須王はね、決して極悪非道ではない。あなたを言葉で傷つけたから、その報いで説明していないかもしれないけれど、私から見れば言葉でまたあなたを傷つけたらと怯えているだけ。それでも、言葉足らずでもあなたの傍にいようとする……どれだけ彼も、過去のトラウマをぶり返しているかしらね」
 
/1002ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ