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エリュシオンでささやいて
第3章 Dear Voice
*+†+*――*+†+*
品川プリンスホテルの上階の一室。
宝石を散らしたような都会の夜景に目を向ける余裕もないまま、薄暗いベッドの照明の中で、ギシギシと音をたてるベッドと共に、あたしは尻を上げた獣の状態で揺れていた。
「ん、んん……っ」
枕を口に当て、俯せになったままの後背位から穿たれているあたしは、シーツを強く掴み、渦巻く皺を作りながら、押し寄せる快感の波と戦っていた。
「んぅ……っ」
気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい。
感じるな、感じるな、感じるな。
心と体がばらばらで。
「ゆ、ず……っ、声……声が聞きたい」
余裕のないような掠れた声を出す早瀬は、いつも最中に、あたしの声を聞きたがる。
嫌だ。
声を聞かれたら、気持ちよくて堪らないことがわかられてしまうから。
あたしはふかふかの羽毛の枕に、顔を沈めて喘ぎを消す。
「ゆず……っ」
身体を開拓されながらも、彼の命に背き、歓喜の声も出さずにいる女のどこがいいかさっぱりわからないが、早瀬は一日に何度も、あたしを抱く。
時間が経てば、気怠いような色気が強まるだけで、彼の雄の芯は依然衰えることなくあたしを穿ち続け、あたしは気が狂いそうになる快感と戦う羽目になる。
何度も何度も、後背位から奥深い胎内でイカされ続けたあたしの身体は、彼の髪が肌に掠めるだけで、びくびくとしてしまう。
彼に征服されたようでこの体位はいやだけれど、だからといって彼と顔を合わせながら繋がりたくない。たまに顔を見ようとする彼を激しく拒んでいるから、ずっと後背位ばかりだ。
見たくない、早瀬がどんな顔をしてあたしを見ているかなんて。
やがて来る我慢の限界。
白い果てが近づく。
「んん……っ」
「――くっ」
早瀬が覆い被さるようにしてあたしと同時に終わりを迎え、あたしの身体から引き抜いて後処理をすると、あたしをうしろから抱きしめながら肩に頭を埋めるようにして、荒い息をついた。
心地よい余韻に浸りながら、ベリーとムスクと早瀬の匂いが混ざった香りにやられて、彼にキスをして向かい合わせでぎゅっとして欲しい気分になるのを、理性を振り絞って必死で押し止める。
まだ早い鼓動が、愛おしいと錯覚しているだけだ。
吊り橋効果のように。