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エリュシオンでささやいて
第3章 Dear Voice
「柚……」
色気たっぷりの艶めいた声で囁かれる。
「ここも、大分俺の形になってきたな……」
あたしの下腹部を、手のひらで撫でられると、
「ずっと俺だけのものだ」
子宮がきゅんと疼く。
あたしの後頭部を手で撫で始めたから、あたしはその手を払い、ベッドの隅っこで息を整える。
あたしには、恋人のような会話や仕草はなにひとついらない。
拒むあたしを早瀬が許すはずなく、露わのあたしの背中を隠すようにして布団を被せ、そのまま両手で横臥した彼の胸元に引き寄せる。
くらくらする、誘淫香。
「離して」
「駄目だ」
「やだってば!」
「……いいから寝ろ」
今まであたしの身体を愛撫していた早瀬の指先が、あたしの瞼を下ろす。
「大分無理をさせた。身体を休めてくれ」
あたしを労るような優しい声に、心臓がドキドキしてしまう。
あたしに優しさを見せるのなら、ねぇ――。
「……お金、毎月十万の返済だけではなく、すべて渡す」
――借金返済するまで、お前の身体が利子だ。
貯金も渡し、半年頑張ってはきたけれど、完済まで気が遠くなりそうで。
「生活出来なくてもいい。風俗で働いてもいい。だから、お願い。あたしを……」
『あたしを解放して』
早瀬の反対の手のひらが、あたしの口を塞ぐ。
「……それは契約違反だ。向こうにいるアキやその母親に直接金を返して貰う」
「駄目っ!! 治療に専念させてよ!!」
病気と闘う亜貴やおばさんを煩わせたくない。
だから――。
「……今まで通りで、お願いします」
先の見えない現況に屈する。
「……アキの元には戻らせねぇよ」
熱い息と共に、怒ったような早瀬の声が鼓膜を震わせた。
「せっかく――のに」
早瀬の声が聞こえなかった。
眠気が急に襲って来たから。
〝せっかくの性奴隷なのに〟と言ったのだろうと思うと、無性に泣きたい心地になりながら、そのまま早瀬の腕の中で意識を落とした。
「――せっかく見つけたんだ。……誰が手放すかよ。あんな思いをして……お前を傷つけ、どれだけ嫌われても俺は……」
震える声。
「あと少しだから。俺の力でやれることをしたら、お前の前から消える。だから今は……この最低男に、我慢してくれ」
顔に唇に。
柔らかなものが触れた気がした――。