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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice

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月曜日――。
「すげー! アウディA8って言ったら、アイ○ンマンのト○ー社長が乗ってた奴じゃないか! 俺あっちに乗りたい、乗りたい!!」
喚くのは、今週は学校がお休みの羨ましい裕貴くん。
裕貴くんが興奮するほど有名な映画に出てきた車らしいが、小林さんと一緒にお留守番。
アウディは棗くんが運転して、助手席に早瀬が座り、後部座席にあたしと女帝が座った。
肘置きにあるボタンを押すとなんとマッサージ機能。
あたしと女帝はきゃっきゃして堪能した。
六時半前に、小林さんが運転するランクルで、裕貴くんも乗せて迎えにくる予定になっている。
そして堂々と三人でエリュシオンに入ると、この組み合わせで入って来たのがそんなに珍しいのか、皆がぽかんとしている。
「おはようございます、皆さま。今週もよろしくお願いします」
女帝は、速攻猫を被る。
女帝の今日のすべきことは、仕事をしながら受付に仕掛けられているかもしれない盗聴器らなにかの機械を探し出すこと。もしかしたら美保ちゃんがスパイかもしれないため、悟られないようにしないといけない。
早瀬は今日もずっと会議らしく、休憩では疲れた顔で出てくる。その顔を見れば、話は早瀬が望むものとはなっていないのだろう。
あたしはあたしで、ログインパスワードを変えたり、とって貰ったバックアップがあるため、ファイルを削除して、新規分は外部USBに保存するようにした。
同じ会社の仲間だから見られてもいいと、だらしなくしていた机の上を片付けて要らない資料はシュレッダーにかける。
当たり前のことをしていなかったあたしはやり方を改め、情報管理をパソコンではなく、自分でやるようにした。
昼休みにシークレットムーンに行って、鹿沼さんに情報漏洩を防ぐために出来ることはないかを聞きに行ってみた。
前より閑散としているように思える社内。なにやら前よりげっそりしたように思える鹿沼さんは、それでもにこにこと笑顔を見せてくれて、話に乗ってくれた。さすがに社内にスパイが居るとは言えなかったため、限定されたいい方になってしまったけれど。
鹿沼さんは応接室に入れてくれ、香月課長ではない……別のイケメンを連れてきた。
茶色い髪の毛で体格がいい。
人なつっこい笑みを向けられた。

