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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice

「二回目以降ログイン画面を開けば、USBが監視したネットワーク回線で、どこからいつ不正アクセスあったかとか、なにを見たのかとか履歴を見ることが出来ると思います。連携すれば、スマホに通知も出来ます。こういう画面のところで……」
鹿沼さんは、本当に親切に説明してくれた。
「凄いもの作っているんですね。パソコン出来ないあたしから見れば、本当に神様です。驚嘆しかないです!」
IT嫌いな早瀬には悪いけれど。
「ふふ、これを作っているのは香月です」
鹿沼さんは誇らしげにそう言った。
「彼が革新的なものを開発してくれています」
嬉しそうな鹿沼さんの横顔を、結城さんが少し寂しそうに盗み見ていた。
邪推していいのなら――。
結城さんはもしかして?
そして、鹿沼さんはもしかして?
……シークレットムーンにはオフィスラブが生まれているのだろうか。
エリュシオンみたいに、仲間を疑う会社ではないんだろうな。
愛することが出来る人達で溢れかえっているんだろうな。
「香月課長によろしくお伝え下さい」
エリュシオンに戻ってから、香月課長に早瀬のことを聞くのを忘れたことに気づいた。
「また今度、会えたら聞いてみなきゃ」
その時、鹿沼さんと香月課長のツーショットをみたいな。
結城さんも素敵だったけれど、香月課長の方が、鹿沼さんにお似合いだと思う。
いいな、イケメン相手にお似合いと思われて。
あたしなんか……。
横浜のランドマークタワーで見向きもされないことを思い出し、ぶんぶんと頭を横に振った。
「さあ、インストールインストール!!」
劣等感を振り切るように、元気よく席に戻った。

