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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice

「なんでそんな奴らに柚が珈琲淹れないといけないのよ」
「ほら、うちの会社って皆バラバラでしょう? あたしに対する時は一致団結はしているけれど、基本仕事はどうでもいい、みたいな。だから珈琲で釣るのもなんだけれど、皆でさあ頑張ろうかという空気を作りたいの」
「……柚、苦労してるね。本当にあんた良い子だよ。なんで私虐めてたんだろうね」
女帝はあたしの頭をなでなでしてくれた。
「今になって気づくんだから、あたしもいけなかったの。だからなんとかしたいなって。仕事の中枢がいないのなら、自分達で頑張ろうという気持ちになって貰いたいの」
早瀬の言葉なら、即座に皆が動くのだろう。
早瀬は早瀬で頑張っている。
こんな些事で手を煩わせたくないのだ。
王様は、エリュシオンの中枢なのだから。
あたしに出来ることを――。
「それなら私も協力するよ。コーヒーメーカーは二台あるし、あんたひとりでやってたら、冷めちゃうでしょう」
「本当!? ありがとう。でもお仕事忙しいんでしょう?」
「そう。忙しいから美保に押しつけるの。盗聴器とかはまだ見つけられないけれど、美保がスパイなら、チクる暇もないでしょう」
女帝は快闊に笑う。
「あのね、ちょっと……上に行って来ていいかな」
「上?」
「うん。上の食堂パラダイスに。ちょっと隆くんにデザートお願いしてみようかなって。その返答に合わせて珈琲を淹れた方がいいかなと」
「誰よ、隆くんって」
「あ、お料理作ってくれてる男の子なの。とっても良い子で、凄く腕がいいの。ちょっといってくるね」
「……それか。早瀬さんが、パラダイスに柚をいかせるなと行ってたの。わかりやす……」
そんな女帝の呟きを知らずして、あたしは足取り軽やかにパラダイスへ。

