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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice

「隆くん、ちょっといい?」
声をかけると、白い服を着た隆くんが、少し照れくさそうにやってきた。
「柚さん、今から食事ですか? 今日待っていたのに「あ、食事じゃなくて、お願いなんだけれど」」
「お願い?」
あたしは、両手を合わせて頭を下げた。
「予算は1万円以内!それで三十個分のなにかデザートを、大至急作って貰えないかな」
「え?」
「隆くんの美味しいデザートを、会社の皆にも食べさせてあげたくて。忙しい?」
そう隆くんを見ると、真っ赤な顔で調理帽を手で取って顔を隠してしまう。
「俺が作ってもいいんですか?」
「勿論!」
「明日用に作っていたティラミスでもいいなら冷蔵庫にあるので、十五分くらいお待ち下されば」
「ティラミス! 明日ティラミスだったの!?」
「はい。でも違うものにします。それで……その代わりといってはなんですが」
隆くん、もじもじしている。
「なに?」
「あの、俺……」
「どうしたの?」
「行ってみたいレストランがあるんですが、女性客が多くて、ひとりでは入りづらいので、そこに……一緒に行って貰えないでしょうか!!」
隆くんは頭を深く下げた。
「俺のティラミスはお金は要りませんので!!」

