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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
  
 意を決し、このまま調子に乗って言ってみた。

「さあ、食べたら働きましょう。お仕事が一段落しているひとは、段ボール箱に溜まってる要らない書類のシュレッダーと、資料整理お願いします。それと課全体で、なにか面白いイベント考えて貰えないかしら」

 しーん。

 笑いが消えた。

 負けるものか。
 
 このまま勢いで言っちゃえ、柚!

「若いひとのエネルギーが欲しいの。企画が上に通れば、高いケーキ奮発しちゃうけど。どうかな、通った分だけ、皆でスイーツ食べない?」

 スイーツマジックにあやかって、口早に威勢良く言っているつもりのあたしの声が、誰が聞いてもわかるほど震えていた。

 うわ、まだ無反応?
 わざとらしすぎて引いちゃった? 
 しらけちゃった?

 あたし、地雷踏んだ?


 だけど――。


「「ケーキを食べるために、皆で考えよう!」」


 どっと、社内が湧いた。

 ……緊張が解けて、腰が砕けそうになっている。

「もし全員企画が通ったら、凄まじい金額になりますけどいいんですか?」

「いいよいいよ」

 そうは簡単に企画は通るものじゃないけれど、やる気が出たのなら上々。

「よし、上原チーフを破産させてやろうぜ!! 

「全課揃った企画なんて初めてじゃねぇ?」

「スイーツのために頑張るよ!」

 ……現金な連中。

 あたしが今まで我慢して嫌悪感を抱いていた相手は、鬼や悪魔ではなく、とても単純な……どこにでもいる人達だったんだと思うと、笑い声が漏れて。

「……ふふ」

 当たり前のことに今さら気づきながら、エリュシオンで笑える自分がいることに、じーんと感動してしまった。

 馴れ合う必要はないけれど、最低限のコミュニケーションを、あたし自ら「わかり合えるはずがない」と、放棄していたのかもしれない。

 そう女帝の時と同じく。

 ……話せばわかりあえた。
 エリュシオンのタルタロスの中でも。

「……っ」

 女帝が淹れてくれた珈琲は、ちょっぴり涙の味がした。


 
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