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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
 

 *+†+*――*+†+*

 午後六時――。

 会議室からひとが出てくる。

 早瀬も出てきて、いつものように社内では素っ気なく、あたしの後ろを通り過ぎるから、あたしはぺこりと頭だけを下げると、早瀬が言う。

「スイーツマジック」

 ……そうか、会議室でもマジックが生じたか。

 よかった、よかった。


 皆は、ケーキ食べたさなのか企画に熱中していて、帰ろうとしない。
 その中を帰るのは非情に気が引けたけれど、

「チーフ、ごちそうさま」
「お疲れ様でした、チーフ!」
「また明日も期待してます、チーフ!」

 悦びの声に背中を押されて、いつにない言葉の嵐に、全身がむずがゆい心地になりながら、前以上に萎んだお腹をしている茂に挨拶をして、一階に降りる。

「行こうか」

 受付に居る早瀬があたしに声をかけた。
 帰り支度を終えた女帝が、あたしを促して三人で外に出る。

 小林さんのランクルが迎えに来ていて、裕貴くんが乗っていた。

「お疲れ~、須王さん、柚、姐さん!」

 社内で裕貴くんが、助手席に座る早瀬に箱を渡した。

「棗姉さんが、須王さんにって」

 女帝と共に身を乗り出して見ると、黒い真鍮で蔦のような模様が彫り込まれているカフスボタンとネクタイピンだった。

 それを見て、早瀬は自分のネクタイピンとカフスボタンを手に取る。

「なんでまた……」

 あたしのぼやきに、カフスボタンをつけ終えた早瀬が言う。

「ああ、カフスに似せているこれは無線機で、ネクタイピンはマイクだ」

「へ?」

「ちなみにイヤホンは……」

 早瀬が背広のポケットから取り出したのは、いつもかけている眼鏡。

 それを早瀬はあたしに駆けさせ、カフスボタンの横を摘まむようにすると、マイクだというネクタイピンをつけた。

「あ~、テステス。マイクのテスト中」

 お馴染みの言葉を吐いた早瀬。
 その直後、耳にかけていた眼鏡のつるから音がした。

『おっけーよ!』

「ひっ!」

 棗くんの声だ。
 
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