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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice

眼鏡を外して、早瀬に押しつける。
「どうしたんだよ、柚」
「怖い眼鏡。眼鏡、怖い……」
すると早瀬が笑って、自分に眼鏡をかけた。
「こっちもOKだ。ファイブセブンは?」
57?
「ふふ……わかった。じゃあそのように」
……あたし達は、まったくわからない。
ただ早瀬が独り言をいっているだけのようだ。
やがて小林さんが言った。
「よーし、ついたぞ。一本先の道を右折すると、指定された『神楽亭』のビルが出てくるはずだ。俺は後方で待機しておくように、言われてる」
「棗くんはどこに?」
小林さんも裕貴くんも肩を竦めた。
「あのひと、ばっと出て行って、ばっとこれ押しつけて、またばっと出て行った。台風みたいだったけれど」
「あはははは」
早瀬は慣れたように笑ってから、言った。
「では行くぞ。地獄の宴会へ」
ごくりとあたしは唾を飲み込んだ。
オリンピアではよく話せなかった真理絵さんと、今回でまた仲良くなれたらいいな、なんて思っているあたしは甘いのか。
それでもなにもありませんようにと祈らずにはいられない。
いざ出陣。
出てくるのは鬼か蛇か――。

