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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
 
 
「でもひとりだけ勝てなかった男がいてね。……もう十年前になるのか。野郎共の集まりの『飛龍』って言うところの現役は弱いくせに、何代か前に総長やってたという用心棒みたいなOBが報復にやってくるのよ。引退しているくせに、いまでも帝王とか呼ばれて、化け物みたいな強さでね」

 女帝は上品な顔をして、物騒なことを語る。

「年上の男ひとりに私達全員でかかっても勝てないから、後日仲間がランドセル背負った小学生の弟を、学校帰りに拉致したのよね。そうしたら怒り狂った帝王はキングコングになるわ、その弟も可愛い顔して小ゴジラのようになるわで、大暴れするから、負けを認めて泣きながらひれ伏したわ。あれが『殺戮の夜蝶』と言われた私の黒歴史ね」

「「へー」」

 また気のない返事しか出てこないあたしと裕貴くん。

 ゴホッゴホッ。

 王様が、静かにしろと咳払い。

 帝王様と王様なら帝王様の方が強そうだけれど、そんなキングコングみたいな男と張り合えるかもしれない、自称「ただの音楽家」。

 りす王、キングコングに打ち勝つことができるか!?



「こちらのお部屋でございます」

 テーブル席では美味しそうにしゃぶしゃぶを食べる客達を横目に、男女問わずたくさんの給仕さん達に頭を下げられながら、案内されたところは、かなり奥まったところにある個室だった。

「お連れ様がいらっしゃいました」

 着物姿でその場に座り込んだ店員さんは、両手で少しだけ襖を開け、手の位置を変えて半分ほど一気に開けた。

「ああ、早かったね」

 朗らかな朝霞さんの声。

 大きなテーブルの左側に、真理絵さんと一緒に畳に座っていた。

 スーツ姿の真理絵さんは、強張った横顔だけを見せて、昔のようににこりともしてくれない。嫌々連れてこられた感じだ。

「皆さん、お久しぶり。さあ、どうぞとうぞ」

 あたしだけの予定だったはずなのに、LINEも既読マークがついてなかったくせに、テーブルには早瀬が昨日電話で聞いたのと同じ六人分のお箸と、お通しらしい酢の物の和え物が五人分。

 向こうふたりに、こちら四人ではきついために、女帝が朝霞さんの横につき、こちら側はあたしを真ん中にして、奥に裕貴くん、手前側に早瀬が座った。
 
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