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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice

緊張と困惑と。
どうすればいいかと頭をフル回転をさせても答えが出ないあたしの前で、苦悶とも快感とも判別しがたい真理絵さんの声が響き、無情にも朝霞さんのスマホ画面は数を減じていく。
「う゛あ゛あ゛あ゛あああんんぐう゛う゛う゛」
真理絵さんの顔は〝アヘ顔〟と呼ばれる類いのものへと変わりつつあるのが、いつも朗らかで凜々しかった真理絵さんを知るあたしとしては、晒し続けるのが到底我慢出来なかった。
「朝霞さん、早く止めて下さい! 真理絵さんの人間としての尊厳を守って下さい!!」
「……っ」
「朝霞さん! 真理絵さんを助けて!」
しかし早瀬は目を細めて、訝しげに言った。
「……お前、持っていねぇのか、解除装置を」
「え!?」
「……ああ。俺だけでは止めることが出来ない。俺だけのパスワードでは。助けたくても、笠井を助けられない」
朝霞さんは苦渋に満ちた顔をして、絞り出すような声を出した。
なんらかの解決策が朝霞さんの手にあるのだと信じていたあたしは、絶望的な声を上げた。
早瀬が言った。
「棗、妨害電波を。……ああ、それを拘束」
きっとここでの会話は、監視役以外にも棗くんにも筒抜けなのだろう。
「今、ここの会話を遮断した。会話している時間も惜しい。俺の質問に率直に答えろ。状況判断が出来るのなら、その女を救うのを優先させろ」
「……わかった」
「外にお前の監視役がいるんだな? ここで俺達が核心を突く会話をしたから、喋るなというお前への警告を兼ねて、起爆装置を作動させた。そんなところか」
「ああ」
画面の数字は110にさしかかるところだ。
朝霞さんから余裕さは消えて、即答だ。

