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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
  
「全員の無事が確認出来るまで、俺だけ逃げられない。今は笠井も足手まといになるだけだ。連中の狙いはお前だ。……共倒れするより、笠井は残った方がいい」

「……っ」

「俺が止めてやる。……今まで口だけで来れたんだ。今度もなんとかなるさ」

 時間はあと80秒を切った。

「そうか。だったらせめて今……、お前の言葉に信憑性を出すために、派手にやってるよ」

 早瀬は悲哀に満ちた顔で言った。

「……上原、追加分の肉の蓋をとれ!」

「へ?」

 突然の意味不明な言葉に、あたしの声がひっくり返った。

 まさか、お肉がもったいないからここでシャブシャブしようとか、肉を奪って逃げようとか言うのだろうか。
 
 驚きの中にいるあたしは、いつの間にかあたしの手が裕貴くんの目から外れていることにも気づかず。

「早く! 中のを俺に寄越せ!」

 怒声に怯えながら、蓋を開けたら――細い筒状のものと、黒い銃があった。

「ひぃぃぃぃっ!!」

「ただのモデルガンだ。早く!」

 いや絶対、この使い込んでいるような感じは本物だ。
 棗くんの差し入れは、早瀬への銃だったなんて!

「ひぃぃぃぃっ!!」

 とてんと後ろに転がってしまうあたしの横で、裕貴くんがさっと動き銃を早瀬に投げた。早瀬は片手で銃を受け取り、さらに続けて裕貴くんが投げて寄越した筒みたいのものを回すようにして銃の先に取り付け、銃の背を撫でるようにしてカチャリと音をたてると、銃口を朝霞さんに向けた。

「ちょ、ちょ、早瀬、駄目だって! 早瀬!!」

 一体、なにをしようとしてるのよ!

「早瀬!!」

「ふんばれよ」

 右手で構える早瀬の銃が、左斜め45度に傾いた。

 その指が引き金にかかり――。

 パシュ!!

 いつもの爆音ではなく、空気音を強めたような音がしたと同時に、朝霞さんが左の上腕を抑えた。

 血がどくどく出ている。

「朝霞さん……!! 早瀬っ」

「大丈夫だ、掠めてくれた。……行ってくれ、また会おう」

 朝霞さんは辛そうに笑う。

「朝霞さん、一緒に!」

「行け! いいか上原、ザクロを口にするなよ」

「え、柘榴?」

「……冥府から、抜け出せなくなる」

 それはギリシャ神話の話?
 なんでそれをあたしに?
 
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