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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice

「なに、超能力!?」
女帝が声をあげると、棗くんは笑いながら言った。
「合気道の一種よ。須王もあんたに合気をかけたでしょう? 身体に触れたところはちょっとの力で重心を崩すことが出来るの」
かつて、バタン、バタンとスタジオで倒されていた女帝は、目を見開く。
倒した早瀬は――。
豪快にテーブルをひっくり返すと、銃弾避けの盾がわりにした。そのまま相手を壁に挟むようにしてタックルをすると、銃を構えていた数人はその衝撃に伸びてしまったようだ。
「すご……」
早瀬は細身の、いわゆる細マッチョタイプだ。
怪力なのか、棗くんが言っていた合気というものによるものか。
どうして格闘術や銃の扱いに優れているんだろう。
「大丈夫か?」
あたしを心配して顔を覗き込みながらも、敵に振り返りもしないで手を伸ばし、筒がついた銃で敵の足を正確に撃つ。
「……ねぇ、あなた何者? 棗くんは前職で……というのは、なんとかなくわかるけれど、あなたはただの音楽家なの、本当に?」
「ああ。ただの音楽家だ」
パシュ!!
パシュ!!
……絶対嘘だ。
「なんで銃を使えるの!?」
「モデルガンだって。男の趣味だ」
「絶対嘘!」
「じゃあ、嘘か本当かお前も撃ってみれば?」
「撃ちません!!」
「あははは。……お前は撃たずに、俺に守られてろ」
眼鏡越し、流し目の不意打ち。
クールさに甘さが付加されて。
「俺が守るから」
うう。
こんな物騒で危険な状況で、いや、そういう状況ゆえの吊り橋効果だからなのか……、早瀬に守られていることに、心臓打ち抜かれたかのようにきゅんとときめいてしまう……、どうしようもなく不謹慎なあたしだった。

