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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice

店にいる敵の数、恐らくは三十人以上。
その中には、サングラスをかけた同じ顔で増殖しているように見える、不気味な黒服はおらず、全員とも顔をさらし女性も混ざっていたのが、なにかひっかかりを覚えた。
……とはいえ、女帝とコンビを組んで中々の息を見せる裕貴くん達と、棗くんと早瀬の三方が(あたしもちょっとはお手伝いしたり)が床に沈める……息をしている骸は山積み状態。
しかしなんで早瀬はこんなに強いんだ?
早瀬は、持っている銃は誰かを助けるためだけに使い、基本体術で相手を倒している。
背広姿の早瀬の動きは素早く、どんな攻撃も最小限の動きでひらりひらりとかわしていくくせに、敵の身体に打ち付けるリーチの長い手や、嫌味なくらいに長い足などの一撃の衝撃は、見た目以上に凄まじいらしく、悲鳴とは無縁そうな体格いい男達が声を上げて吹き飛ぶ。
……中には歯を飛ばした気の毒な女性もいた。
なんというか……、無駄ない動きなんだ。
戦い慣れしていた女帝のように、無駄に身体を動かすことなく、体力を温存しつつ相手を倒す……サバイバルで重宝されそうな動きで。
まさか戦場とか無人島とかで鍛えたわけじゃないだろうに、彼は明らかに素人の動きとは違っていた。
「撤収!」
凛とした早瀬の声と共に、散っていた皆が早瀬の元に集まり、出口から走って出て行く。
エレベーターを見た棗くんが声を上げる。
「上に上がってきてる。もしかすると追加要員かもしれない」
「え、まだ来るの!?」
どれだけの人数が、あたしを攫いにくるのだろう。
どれだけの、銃を持った怖い人達が。
「早く! 階段で行く」
早瀬が非常階段と書かれてあるドアを開いていた。

