この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice

機械はちんぷんかんぷんのあたしとしては、どうして覗けるようになるのか理屈がまったくわからないけれど、しばらくこれで遠隔的に様子を見ることになったとはいえ、昨日、また茂が不正アクセスしていると、スマホに通知が来た。
しかし茂は、昨日は早く帰っていた。
また会社に戻ってアクセスしたのか。
それとも、別人が茂のパソコンからアクセスしてきたのか。
戻ってアクセスするほどのものが今のパソコンには入っていないことは、月曜日に既にわかったはずだ。
さらに別人が茂のパソコンを使っているのなら、なんであたしのパソコンから直接ログインしないのかわからない。
茂のパスワードだけを知っていたというだけのことにしても、なんで知り得たのか。
大体なんであたしのパソコンを覗くんだろう。
あたしのパソコンは、なにか特別な仕掛けがなされているのだろうか。
機密情報を覗くなら、課長や部長クラスの方がいいのに。
なにひとつわからない中でのログ解析に、新たな事実がわかればいいなあと思っている。
「ええと、あなたのお名前を伺ってもよろしいっすか?」
……このひと、「っす」としゅうしゅうが口癖らしい。
本人は大真面目なのが余計におかしくて、笑いたくなるのを必死で堪える。
「上原です。上のエリュシオンの」
「了解っす! ちゃんと主任に渡すっす!」
すっすに笑いたい。
だけど緩む口を一度引き結んでから聞いてみた。
「ひとつお伺いしたいんですが……」
「なんっすか?」
「香月課長のフルネームはなんというんですか?」
……夜、ふと思った。
ワタルとシュウと言う名前の反応と、香月課長に対する反応は似ている。
もしかして、香月課長がそのワタルかシュウではないかと。
「課長っすか? コウヅキシュウっす!」
ビンゴ!!

