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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
「別に今もプライベートで……」
「意味が違うだろ? お前だって俺を入れようとしなかった。前は俺が無理矢理押し入っただけのことは俺だってわかる。でもこれは、お前の意思表示だ。俺の領域に踏み込みたいと」
「……っ」
「お前、俺に線を引いていただろう? だからお前が嫌がると思ったから呼ばなかっただけだ。お前が来たいというのなら……全然構わねぇよ」
ダークブルーの瞳が細められて。
「俺の領域で抱かれてぇのなら、俺は遠慮しねぇぞ」
「え、遠慮……?」
「当然だろ。嫌がる女抱くのじゃねぇのなら。……それでもいいのか?」
ずるいよ、そのいい方。
「あなたは、あたしを入れて本当にいいの?」
「当然だろうが。俺、舞い上がりそうなんだけど」
「………」
拒否されなかったことに安心しながら、嬉しそうに目を細める早瀬を見て、あたしはもしかして、行ってはいけない場所を指定してしまったのではないかと思った。
「……なんで眉間に皺よ」
早瀬は笑いながら身体を伸ばし、あたしの唇に触れるだけの軽いキスをした。
「ちょっ!!」
「キス、お前に嫌がられたけど、これは俺が頑張ったご褒美に貰っておく。本当は深いのしたいけど」
「……っ、い、嫌がられる、って?」
「嫌なんだろ? するなと言ったのお前だろう。酔った時もしちまったけど、反省して我慢してるんじゃねぇか。……っと、時間だ」
苦笑しながら早瀬が立ち上がり、離れて行こうとする。
あたしは慌てて早瀬の腕を掴んで言った。
「別に、嫌じゃない」
「は?」
「だから、あなたとキスするの、嫌じゃないの!」
ぼっと顔が赤くなる。
「お前……」
早瀬の手が伸びる。
可愛くないあたしは、早瀬と同じ空間にいるのが居たたまれなくて、あたしの方が早瀬を置いて走って出て行こうとした。
だが――。
「言い捨てすんなよ、馬鹿」
早瀬が後ろから抱きしめてくる。
ああ、ベリームスクの匂いだ。
凄く安心して、涙がでそう。