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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
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金曜日――。
この一週間は、やけに早く感じた。
やはり毎日、誰がスパイなのかと炙り出すのに緊張してパソコンに座っていたし、スタジオに戻れば男女別に練習組と家事組に分かれて、女帝と協力しているとはいえ、広いスタジオを掃除したり六人分の食事作って労力を消費したりするし、早瀬と会えないのがもやもやして、必要以上に精神力を浪費して寝てしまうことが多く、時間に流されていた感じだ。
そして昨日、金曜日は決行だと早瀬から聞いて、朝から浮かれているお馬鹿なあたしは、女帝に色々と……そう経験豊富な女帝に、身体での愛の伝え方というものを教えられて、必要以上に緊張している。
午後、会議室でまた新たなデモテープと戦いながら邪心を鎮めていたあたしに、今日六時に会社を出て夕飯をどこで食べるかと、早瀬が缶珈琲を差し入れてくれながら、尋ねてきた。
「今日の夕食は……」
そこで思い出す。
「あ、別々にお願い。あたし先に寄るところがあって、そこで食べてくる。八時には戻ってくるから、待ち合わせを……」
すっかり隆くんのことを忘れていた。
「は? 寄るところ? 聞いてねぇぞ」
「ごめんね。だから夕飯は……」
「誰」
「え?」
「相手」
早瀬は椅子に座り、無駄に長すぎる足を組むと、ぶすっとした顔で訊いた。
「朝霞? それとも朝霞以外の男?」
……なんで男性限定なんだろう。
正解は正解なんだけれど。