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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
「狙われているじゃねぇかよ、食堂でお前とべちゃくちゃ喋って、あんなたくさんの柚を入れてお前を喜ばせている時点で、特別な意思表示じゃねぇかよ。なんで俺がこんなことをお前に教えねぇといけないんだよ、アホ」
「前に食堂に来た時、そんなこと邪推してたわけ!? あたしと隆くんは健全なお付き合いをしてます!」
「じゃあ俺とは不健全だって言いたいのかよ!」
「なんで、そこまで怒られるの、あたし!」
「それくらいのことをしでかしてるじゃねぇかお前! 今日どれだけ俺が楽しみにしていたと思ってるんだよ。それなのに他の男と会うなんて……このアホ!」
デコピン!
しかも二回にノックアウト寸前。
「それに今、銃で狙われている状況なの自覚しろよ! ひとりでさっさといってさっさと帰って来れると、本気で思ってるのか!? お前、その隆くんとやらが敵だったらどうするんだよ」
「怖いこと言わないでよ! 隆くんはそんな子じゃないし」
「断って来い」
「嫌」
「じゃあ俺が脅してくる」
立ち上がる早瀬をあたしが止める。
「なんで脅すのよ」
「じゃあ俺とその店に行け。俺が、調理師にわかるような説明をそいつにしてやるから!」
色々なご馳走を食べているだろう王様は、そんなことをのたまった。
「あなたと行ったら、あたしがするお礼の意味がなくなるでしょう!?」
「お前は、そんなに隆と食事に行きたいのか、俺より!?」
「そ、そんなことは……。ただお礼で……」
バアン!
早瀬がテーブルを片手で叩いて立ち上がった。
「だったら勝手にしろ。お前がそっちに行くのなら、今日はやめる」