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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
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東京都港区台場――。
江戸時代末期に黒船対策として台場(砲台)の建設がなされた埋め立て地が、東京臨海副都心のひとつに数えられるようになった。
近くにはレインボーブリッジや有名テレビ局を始め、水に囲まれた綺麗な景観を売りにした高層ビルやホテルが建ち並ぶ場所でもある。
「お台場に住んでるっすか!?」
あたしの口からは、シークレットムーンのしゅうしゅうさんのような息が荒く出ている。
「まあな。最上階じゃねぇけど」
……車はアウディ。
なんと棗くんがアウディを乗って、木場駅に来てくれたのだ。
――もう本当に人使い荒いわよねぇ! 私に交通機関で帰れというんだから!
――車にばっかり乗っていると、太るぞ?
――いやーーーん!!
先に早瀬が棗くんに頼んでいたらしい。
そして棗くんが去り際にあたしの耳に囁いた。
――須王の言葉を聞いてやってね。あいつ、嘘はつかない奴だから。
離れろと怒る早瀬に目もくれず、緋色の唇で弧を描いた棗くんは、なんだかとても寂しそうな眼差しをしてぼそぼそと呟いた。
〝……が先にきみを……になったんだけどな〟
聞き返したら、何も言わずに手を振られて背中を見せた。
……そしてアウディに乗り込んで、七時過ぎにはめっきり暗くなる空の元、夜景を流しながら連れられたのは、レインボーブリッジ!
あたしは東京に住んでいるくせに東京の地図には疎いけれど、さすがにレインボーブリッジと、照明に反射する水面を見ていれば、今どこを走っているのかはよくわかる。