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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
「ふぅん?」
案の定、早瀬の口調からして誤解している。
「期待してません、なにひとつ期待してませんので!!」
「今回、何回しようか」
「だからやめて、そっち系の話!!」
「お前が言い始めたんだろうが」
「言ってない、言ってない!」
両耳を手で抑えると、車が地下駐車場に停まった。
さて、降りようとすると腕を引かれて、唇を奪われる。
「キス、たっぷりしような」
怪しい眼差しで甘く囁かれて。
「ちょ、ちょっ、キャラ崩壊!!」
「だから、これが素だって」
「悪霊退散!!」
手をクロスさせて、バッテンマークを作ってしまうあたし。
「それなら、十字架マークにしろよ」
……指導が入り、十字架になった。
「でも俺、効かないから」
やった意味もなく、また唇をちゅっと啄まれて。
ねっとりとした視線だけが余韻を見せる。
「ここでしたくなるから、出よう」
「し……!?」
早瀬のストレートな言葉は、本当に心臓に悪い。
早瀬も高級牛のしゃぶしゃぶを食べたかったのか、肉ばかり手にして、あたしが押すカートに持ってくる。
「なんでそんな高い肉を持ってくるの!? ただの和牛でいいでしょう!?」
次に手にしてきたのは、一枚二千円もする分厚いサーロイン牛。
スーパーでそんなものを手にするひと、初めて見た。
あたしが出したのは、お買い得品の上に夜で値下がりしたもの。
「なんでそんな安い肉だよ! 頑張らねぇといけない俺に、せめてこの分厚いステーキにしろよ!」
「だからその頑張るってやめてよ!」
「そっちじゃねぇよ! そっちはまだ頑張らなくても大丈夫な年だよ。頑張るのは俺の語りの方だ!」
「あなたの語りになんでサーロインが必要なのよ。もう夜よ!? 夜にステーキなんて消化に悪いわ。ぶよぶよ太るわよ!?」
「身体たくさん動かすんだから大丈夫だろう!?」
ドヤ顔で言われた。
「な」
しかもどんな顔でも王様の美貌を損なうことはなく。