この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
 

「……無性にお前に会いたくてたまらなくて。一度、呼び鈴鳴らしたんだよ、お前の家の」

「え……」

「門前払いさ。その頃の俺、かなり廃れていただろうからな」

 そんなの初めて聞いた。

「その後組織が解体されたから、十七の高二の夏に俺と棗はお前の居る高校に入った。地下育ちであるのなら、手立ては幾らでもある」

 早瀬はやるせなさそうに笑った。

「だけど、お前は高嶺の花で、眩しすぎて」

 眩しそうに目を細めて。

「あたしは……」

「お前が自覚してねぇだけで、お前はモテてたんだ。綺麗で優しくてピアノが出来て、有名人の娘で。……声をかけられなかった」

 早瀬はモテているとは聞いていたけれど、早瀬の姿を高校前期で見たことがなかったのは、いなかったからなのか。

 どれだけ早瀬のことに興味がなかったんだろう。

「棗は偶然装って、時折お前に声をかけていたけれど、お前の記憶に留まらない程度が精一杯で。俺は……お前に近づきたいのに近づけなかった。だからピアノを必死に覚えた。お前の気を引くために。元々指は器用だったから、組織で聞いたことがあった曲なら、なんとか出来た」

 組織であの曲が流れていたというのは凄いけれど。

――クラシック、教えてくれね?

 心が九年前に戻る。
 あたしを苛み続けた、九年前に――。
 
/1002ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ