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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
 
 
 早瀬は涙で濡れた目を激しく揺らして、そして苦しそうに細めた。

 そこからこぼれ落ちる涙は、強い悔悟の念に満ちていて、見ているだけで胸が突かれる。

 強靱な早瀬の姿は儚げに見え、早瀬が消えていかないように……あたしは早瀬を抱きしめ、その広い背中を撫でた。

 彼の身体の震えが直に伝わり、あたしも嗚咽を漏らす。

 それでも、ここを乗り切らないとあたしは早瀬と前に進めない。
 またいつものように、昔に戻ってしまうから。

「話せるだけでいい。早瀬の心があたしを騙していなかったのなら、未来へ、進ませて。あたしも、早瀬も……」

 そう言うと、早瀬の大きな手があたしの背中に回った。

「……お前の」

 そこで早瀬の言葉が途切れてしまう。

「あたしの?」

「……っ」

「早瀬?」

「……お前の命が、かかっていたんだ」

「え?」

「組織を……甘く見てて。俺と棗が潰したのに。お前に会えるまで、あんなに時間がかかったのに……まだ生き残っていて。学校にも居て」

 早瀬の頭があたしの肩に埋められた。

 組織って自然に解体されたのではなく、早瀬と棗くんがどうにかしたということ?
 
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