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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
「……お前の家にも居て」
「え……」
「お前に、汚ぇ手で触れるなと言われてっ」
うちに来たの?
それとも裏でやりとりがあったの?
誰に言われたの?
だけどそれは、声になって出てこなくて。
「だから俺は……賭けに出たんだ。上手くいくと甘く見ていた。上手く収めれたらお前に、好きだと言おうとした。穢れのねぇお前に、お前が好きだと、お前が必要だから傍にいて欲しいと、愛して欲しいと、言おうとしてたんだ。俺は……」
――俺にだって……伝えたい言葉はあったんだ。……九年前から、あんな形ではなく。
「それなのに、気持ちが抑えられずに、音楽室でお前を抱いてしまって。俺もお前も初めてだったのに……。だけどそれを力にして、次の日に言おうと、あの後……いつもは蹴っていた、俺の本当の身内だとかいう奴らと会うことを承諾した。組織に監視されていた俺に連絡を取れた奴らなら、組織との上と知り合いということになる。だから俺は、組織を抜けることでの俺とお前の安全の保証を、そいつらに……っ、だけど……」
早瀬の声が震えた。
「……そいつらは、組織の連中となにも変わらなかった。あまりにも非道で、あまりにも身勝手な奴らで。誰のせいで俺がこんな目に遭っているんだと思って……決裂してしまった」
「………」
「最後の切り札を失った俺は、自作自演で倒れ込んだ奴を嘲笑ったよ。そこまでしてどうだ? それでもあいつらは、まるで助けようとしてねぇじゃねぇか。やるだけ無駄だ。やるだけ滑稽だ。身体を張っても、話が通じる連中じゃねぇんだから。こいつらに会いに来たことが間違いだった」
「………」
「……それでもな、俺は……僅かには期待してたんだ。血が繋がっているのなら、暖かい血が通っている人間であるのなら、苦しんでいる俺を理解してくれるんじゃねぇかって。唯一中立でいようとしていた奴なら、話が通じるかもしれねぇと最後まで訴えた。だけどあいつは……、自作自演の方についた。俺は……見向きもされなかった。俺も倒れて気を引けばよかったのかよ……」
ぎゅっと苦しいくらいに抱きしめられて。