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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
 

 思わず四つん這い状態で、傷跡に手で触ると須王は笑う。

「何度も死にかけてきたからな」

 いつも後ろで抱かれていたのと、須王のことに興味がなかったから、気づかなかっただけ。九年前もきっと傷跡があったのだろうけれど、初めてのあたしは与えられる刺激に精一杯だったから。

 ……気づいていたら、あたしと須王の仲は進んでいたのだろうか。
 常人ではない須王の肉体に、そこに刻まれた凄惨な傷跡に、あたしはなにを感じたのだろうか。

「気持ち悪くねぇ?」

「どうして? 生きている……勲章だもの。須王のものなら愛おしいよ」

 彼の傷跡にキスをしていくと、須王はぴくりと跳ねた。

「痛いの?」

「いや……。お前に、名前で呼ばれて愛おしいと言われたから、ちょっと」

 須王の顔は仄かに赤い。

「……嫌だった?」

「嫌なわけねぇだろ。どれだけ夢見ていたのか」

 早瀬の手があたしのシャツのボタンにかかる。

 器用な指が震えているのを見た。

「あ……ちくしょ。初めての時みたいに、緊張して」

「自分で外そうか?」

「嫌。なんでお前、余裕なの?」

 ぷくりと膨れた須王が可愛い。

 肉体は鍛え抜かれたものなのに、どうしてこんな可愛い仕草をするんだろう。いつもそうだったのだろうか。それとも今、心が近いからだろうか。

「余裕じゃないよ。ドキドキしてるもん」

 須王はなんとかボタンを取り外して、キャミ姿にすると、肩にキスをしながら、

「ふぅん? ドキドキ? どれくらい?」

 片手をあたしの胸の下に置き、反対の手をキャミの下の素肌に伸ばして、あたしの唇にキスをしながらブラのホックを外した。
 
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