この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
須王があたしを見ながら、胸の頂きをブラの上からもぐもぐと口を動かし、挑発的な眼差しであたしを見ているだけで身悶えるのに、ブラが外され、直接須王が乳房に口をつけているところを見ると、はしたない声を出してしまい、手の甲を口にあてる。
「柚。今夜からそれ、禁止。俺に、お前の感じている姿、すべて見せて?」
「……っ」
「柚」
おずおずと手を離したあたしだが、須王が顎を斜めに持ち上げるようにしながら、あたしの顔を見つめての乳房にキスに、いつも以上に敏感に感じてしまうあたしは、いつものくせで手で口を押さえて、声を殺そうとしてしまう。
感じれば感じるほど、頑なにあたしはそれを須王に見せられなくて、なにか怖さまで感じてくるのだ。
初めてではないのに。
何度も抱かれているのに。
ああ、いつもは姿がないまま、後ろから抱かれていた。それが今、こんなに男の顔であたしに触れるから、須王じゃないみたいで、怖いのか。
あたしは――後ろからでも、須王に抱かれているということに安心して、須王とは思えない男を目の前にして怯えているんだ。
あたしの戸惑いを感じたのか、須王はあたしの身体をぎゅっと抱きしめた。
触れあう肌が、燃えるように熱くて。
だけどそれは、あたしの心を宥めるような心地よさがあった。
「そう、だよな。九年、俺はお前を苦しめてきた。お前に好きだと言われて浮かれていたけど、お前の身体は……お前の言葉より正直かもな。お前の身体が一番、お前の傷ついた心を知っている」
「違……拒んでいるわけじゃないの。くせというか……」
「拒んでいるんだ、お前の心は。そう簡単に、俺を許せねぇのは道理。むしろ、好意を口に出して貰えただけで、奇跡的なものだ。調子に乗りすぎていたな、俺は」
胸のあたりに、須王の熱いため息を感じた。
面倒だと思われてる。
飽きられている。
そう思ったら、胸がぎゅっと絞られ、涙がぽろぽろ零れて、嗚咽までが漏れてしまったのを、須王は肌から感じたようで。