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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
 

 須王があたしを見ながら、胸の頂きをブラの上からもぐもぐと口を動かし、挑発的な眼差しであたしを見ているだけで身悶えるのに、ブラが外され、直接須王が乳房に口をつけているところを見ると、はしたない声を出してしまい、手の甲を口にあてる。

「柚。今夜からそれ、禁止。俺に、お前の感じている姿、すべて見せて?」

「……っ」

「柚」

 おずおずと手を離したあたしだが、須王が顎を斜めに持ち上げるようにしながら、あたしの顔を見つめての乳房にキスに、いつも以上に敏感に感じてしまうあたしは、いつものくせで手で口を押さえて、声を殺そうとしてしまう。

 感じれば感じるほど、頑なにあたしはそれを須王に見せられなくて、なにか怖さまで感じてくるのだ。

 初めてではないのに。
 何度も抱かれているのに。

 ああ、いつもは姿がないまま、後ろから抱かれていた。それが今、こんなに男の顔であたしに触れるから、須王じゃないみたいで、怖いのか。

 あたしは――後ろからでも、須王に抱かれているということに安心して、須王とは思えない男を目の前にして怯えているんだ。
  
 あたしの戸惑いを感じたのか、須王はあたしの身体をぎゅっと抱きしめた。

 触れあう肌が、燃えるように熱くて。
 だけどそれは、あたしの心を宥めるような心地よさがあった。

「そう、だよな。九年、俺はお前を苦しめてきた。お前に好きだと言われて浮かれていたけど、お前の身体は……お前の言葉より正直かもな。お前の身体が一番、お前の傷ついた心を知っている」

「違……拒んでいるわけじゃないの。くせというか……」

「拒んでいるんだ、お前の心は。そう簡単に、俺を許せねぇのは道理。むしろ、好意を口に出して貰えただけで、奇跡的なものだ。調子に乗りすぎていたな、俺は」

 胸のあたりに、須王の熱いため息を感じた。

 面倒だと思われてる。
 飽きられている。

 そう思ったら、胸がぎゅっと絞られ、涙がぽろぽろ零れて、嗚咽までが漏れてしまったのを、須王は肌から感じたようで。
 
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