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エリュシオンでささやいて
第3章 Dear Voice
 

 それぞれの観葉植物の水やり方法を調べた時に、色々と観葉植物のことを知った。それ以来、名前をつけて可愛がっている。

「オーちゃん、見事につやっつやだねー」

 声をかけてあげると、喜んでいるような気がする。
 
「ユッカちゃん、パキラちゃん、おはよう。お水飲みたい?」

 ……なんて密やかな憩いの時に、やって来るんだよね、ご苦労なことに。

「ねぇ、上原さん。あなたなんでエリュシオンに居るの?」

 毎朝よく懲りずに甲高い声を出す「女帝」こと、三芳奈緒(みよし なお)。

 エリュシオンの株主のひとつである、MSミュージック社長の娘で、早瀬を追いかけて来たらしい……あたしより一つ年上の美女で、二年前に雇用されて受付嬢をしている。

 あたしは、身長も目鼻立ちも小さいのだが、女帝はあたしと頭ひとつ違い、高身長で肉感的な体格をして、目鼻立ちが大きく整っている。目なんかくっきり二重で、長い睫がばっさばさの、本当に華やかな美人だ。

 彼女の後ろ盾であるMSミュージックは最近伸びてきた会社であり、それと同時にこの女帝の態度も大きくなっている。

「あなた、水やり係で雇われたの?」

「三芳さん、モグラだからじゃないですか?」
「そうそう、土の中からにゅうっと出てきて、水やるんですよ」
「あはははは」

 呼応して、彼女の横にいる三人の女性達が悪意ある笑いを見せる。
 
 女帝の腰巾着三人衆は、イベント課のチーフ牧田陽子、ライセンス課のチーフ道下文子、そして女帝と同じ受付嬢の谷口美保の三人だ。

 エリュシオンは課長が男なら、チーフは必ず女となり(その逆も然り)、部下は男女ひとりずつが基本。

 渡瀬課長並みの立派すぎる体格をした牧田チーフ(39)、がりがりに痩せている道下チーフ(32)、受付嬢の谷口さんは現代っ子の典型的に媚びるタイプで、短大卒業で今年入って来た最年少(21)。

 腰巾着も悪い顔をしてはいないが、それぞれに濃い化粧をしているために、四人揃えば、チンドン屋のような派手派手しい集団である。

 チーフとしてあたしは最年少であり、いつも無能だと課長に言われて孤立しているのに、早瀬がデモの選曲にあたしを指名してから、さらに嫌がらせが頻繁になった。
 
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