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エリュシオンでささやいて
第3章 Dear Voice
「どうしてあなたみたいな役立たずな人間をエリュシオンが雇ったのか、そして早瀬様がどうしてあなたを選んだのか理解に苦しむわ」
早瀬が女帝を食ったのかはわからないが、早瀬好みのメリハリついた身体をしている女帝。
ご自分が有能だと思うのなら、直訴なり、美味しそうなその身体を捧げるなり、プロジェクト要の人選をやって下さい。企画を簡単に潰すなど言うハデスのプレッシャーから、あたしを解放して下さいな。
……とは言えないあたしは、心で毒づく。
「本当よね。エリュシオンにどうしてこんな異分子が来たのかしら!」
あたしはエリュシオンの先住者なの。新参者はあなた方よ、あなた方!
「早瀬様は、きっとこのモグラに騙されているんだわ!」
だったら早瀬に直接そう言ってきてよ。
あたしに言ってどうなるのよ!
「本当本当! どう見てもモグラなのに~」
モグモグ、ふかふかの毛をして可愛いじゃん!
イラストだって、可愛く皆書いてるじゃん!
大きなおててで、一生懸命土掘り続けて真面目じゃん!
この四人は、早瀬の熱狂的なファン。早瀬が居ると、恋する女になって気持ち悪いほど豹変する。
早瀬の女の趣味がどうだかわからないけれど、あたしが早瀬だったら、ごめんだ。声色が変わった時点で寒気がする。
だけどまあ、女帝の父親がスポンサーらしいHADESプロジェクト。牧田チーフと道下チーフは、日頃早瀬との接点があり、かつ女帝含めてHADESプロジェクトメンバーでもある。能力はそこそこあるひと達らしいから、恐らくはデモの選考に自分達が選ばれると思っていたのだろう。それが早瀬の独断で、突然あたしに回ってきたから、怒り心頭なのだ。
「早瀬様は燦々とした日が当たっている方なの! タルタロスのモグラが一緒にいたら、お日様で即死しちゃうわよ?」
おお、脅しかい?
「目も見えなくなるわよ?」
「太陽が天敵のモグラは、穴蔵暮らしだものね~」
「きゃははは。モグラちゃんは日常生活出来ないんだ~」
ため息をついたあたしは、ポケットからスマホを取り出した。
どんなに頭悪いあたしだってモグラのことは知っている。
黙っていようとも思ったけれど、モグモグが可哀想だし、だけどきっとあたしの言葉なら信じないだろうから、ネットのページを見せて上げる。