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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
 

「この家にあたしが来ること想定していなかったのに、どうして枕元にそれがあるの?」

「……ワイン用意するフリして、忍ばせたんだよ」

「そっか。ここで誰か抱いていたわけじゃなかったんだ」

「お前っ、だから家に呼ぶ女はいねぇの! お前が初めてなんだよ」

「初めて……」

 なんだか嬉しくなった。

「もういい?」

 見れば、あたしの身体の両側に手をついて、腕立て伏せをしているかのような須王の顔があった。

「挿れるぞ」

 いつの間にか準備を整えていたらしい須王は、あたしが頷くのを見ると、啄むようなキスをして、何度か潤んだあたしの秘部にそれをなすりつけるようにしながら、猛ったものを蜜口に宛てがい、ぐぐっと中に入って来た。

「ん……」

「ぁ……っ」

 どちらも痛いわけではないのに、苦悶の表情をしながら繋いでいく。
 
 熱く息づいたものが、狭い蜜壷をぎちぎちと押し開くようにして、あたしの胎内で存在を主張してくる――。

「キツ……」

「ぅ……ん」

 やがて、恥毛同士が擦れ合う感触がすると、須王は仰け反るようにしながら、色っぽい声を出した。

「お前の中……熱くざわめいてる……」

 天井を仰いでいた、気怠そうな顔があたしに向けられた。

「柚……」

 須王の目から、涙が一筋……頬に伝い落ちた。
  
「須王……なんで泣いてるの?」

「お前こそ」

 あたしも、無意識に泣いていた。

「好きな女とひとつになれるのは、感無量で、幸せなんだ」

 須王は満ちた表情をした。

「九年前も……泣いたな、俺。この半年、ずっと抱いてたのに……二度目の感覚だ」

 あたしもそう。 

 相手に愛されながら抱かれるのは、苦しいセックスを忘れられるほど、幸せなものなのだ。

「柚……、好きだ」

 須王が小首を傾げるようにして、掠れた声で言う。

「繋いでも想いがとまらねぇ。さらに想いが膨らむよ」

 その言葉だけで、身も心もきゅんとする。

「……我慢してるんだから、締め付けるな」

 須王が、悩ましげで。

 筋肉や鎖骨が男のもので、こんな男とひとつになっているのだと思えば、やはりキュンキュンしてくるもので。

「だから締め付けるなって」

 須王は慌てたように言いながら、そのまま覆い被さるようにして、あたしの唇にキスをした。
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