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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
 

 荒い息をついていたら、須王と目が合った。

「少し、イッた?」

「……ん……」

 恥ずかしくてそうとしか言えないあたしに、ふっと笑う声がして、いい子というように頭を撫でて啄むような軽いキスをくれながら、また……静かだけれど、緩やかで大きな律動を繰り返す。

「ぁ、ああっ」

 ぞくぞくとした快感が身体に走り、あたしは広い須王の背中に指をたて、須王のリズムに合わせて、身体を揺らす。

「柚……」

 やるせなさそうな、官能的にも思えるその声で呼ばれたのは、あたしの名前。気持ちよい波に乗るあたしは、ぼんやりと須王を見上げる。

「気持ちいい?」

「うん……とても……」

 言葉すら快楽に乱れて、声に波が出来て。

「すごく……幸せ。須王は……?」

 須王は、切なそうな顔で見下ろして、動きを止めて言った。

「愛してる」

「……っ」

 波が突如去ったように、あたしの心に突き刺さる。

「愛してるんだ、柚」

 何度も重ね合わせた、須王の唇が戦慄いた。

「今まで……ごめん。お前を苦しませてごめん。言葉が足りなくてごめん。お前が嫌がってるのに、無理矢理抱いてごめん」

 その声は悲痛さに満ち満ちていて、あたしの心を突く――。

「お前を……離してやれなくてごめん」

「どうして、あたしを離すの……?」

「俺……離したくねぇ。こんなに優しくて、綺麗な女……手放したくねぇ。ずっと、俺のものにしてぇ!」

「須王……?」

「……俺、頑張るから。俺から〝武器〟がなくなっても、それでもお前をもう苦しめねぇから。だから……俺の傍にいて。どこにも行かないでくれ」

 蕩けている瞳は、泣いているようにも思えて。
 泣いている子供の須王が、見えた気がした。

 彼は、あたしに……母の愛も求めているのかもしれない。
 無条件で愛してくれる、そんな愛を。
 
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